列車の揺れが心地よい。洋の東西を問わず、寝台列車は不思議と熟睡できる。ハンガリー国境付近でパスポートチェックがあり、早朝、係官に起こされる。時計の針を1時間遅らせる。左側通行だった列車がいつの間にか右側を走っている。地続きのヨーロッパだが、確かに国境は存在する。
ハンガリーの農村風景が窓の外を流れる。ルーマニアの風景に比べて緑の色がやや濃いようだ。食堂車の朝食は卵焼き。この時間帯、さぞ食堂車はにぎわっているだろうと思ったが、車内に乗客はほとんどいない。希望すれば朝食は乗務員が各部屋まで届けてくれるようだ。
■車掌や乗客が語学の“先生”
午前8時50分、ブダペスト東駅に到着。35分後には特急列車に乗り換えなければならない。せっかくここまで来て「ドナウの真珠」とたたえられたブダペストを見ないで去るのはもったいない。しかし、時間はどうしようもなく、ここは駅舎の外観を撮影して引き上げた。
鉄道写真家は忙しい。今回、東京から同行しているK氏は「年間250日以上、世界のどこかで乗り物に乗って過ごしている」という鉄道専門の写真家だ。列車に乗る前に先頭の機関車を撮影するのは当たり前、一度は座席に着くも列車が動き出す前に席を立ち、車内の撮影を始める。食堂車では、おいしそうな料理を何種類か組み合わせて、コース料理のような写真に仕上げる。
最も参考になったのはこの人の外国語習得法だ。読み方も意味もわからない鉄道の表示や地名を、検札で車内を回る係員や仲が良くなった乗客にメモとペンを差し出して意味を聞く。もちろんネーティブの生の発音がその場で聞ける。言葉を話してみて相手に発音を直してもらう。授業料はゼロ。笑顔で礼を言えば相手も気持ちよく「どういたしまして。ほかに何か知りたいことはないですか?」と続く。
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