■シーン1 祭り日和
関東地方は平年より12日も早く梅雨が明けた。節電の夏は長そうだ。その梅雨明け翌日の7月10日、鎌倉の低い山並みの上にも夏雲が立ち、厳しい日差しが照りつけた。それでも、海風が冷気を運ぶせいか、木陰はしのぎやすい。
猛暑は祭り日和でもあった。鎌倉旧市街大町の鎮守・八雲神社では大町祭、極楽寺・稲村ケ崎地区では熊野新宮のお祭り、漁師町の風情をとどめる腰越地区は小動神社の天王祭…。どの祭りも地元の人たちが大切に守り、伝える宝である。
(撮影:写真報道局 渡辺照明/文:編集委員 宮田一雄/SANKEI EXPRESS)
江ノ電の極楽寺駅に近い導(みちびき)地蔵の地蔵堂では、地元の鎮守である熊野新宮の祭りの1カ月前から夕方になると子供たちが集まり、祭り太鼓の特訓を続けた。鎌倉市教委発行の「かまくら子供風土記」によると「導き」は「子供たちを守り育ててくれる」という意味で、「この地蔵の視野の中に入る場所では災難が起きない」という。太鼓の指導にあたる地元の役員さんたちの子供たちを見守る目もやさしい。
祭り当日の神輿には「八雲神社」のノボリ。あわてて「子供風土記」で調べるとこの八雲神社は大町の鎮守とは別の神社だった。「極楽寺地区には八雲神社と諏訪神社もありましたが、関東大震災で社殿が倒れたので、1928(昭和3)年から熊野新宮に合わせておまつりしているのです」
なるほど。熊野新宮の祭礼は夏と秋にある。もともと7月は八雲神社、9月が熊野新宮と諏訪神社のお祭りだったようだ。
■シーン2 オレンジフラッグ 鎌倉から全国へ
いまはウインドサーファーの出航拠点としても知られているその材木座海岸に今月(7月)3日夕、オレンジ色の大旗が翻った。
夏になると鎌倉の由比が浜、材木座海岸、腰越の3つの海水浴場には、海の様子を伝える3色の旗が掲げられる。
青 遊泳可能
黄 遊泳注意
赤 遊泳禁止
オレンジフラッグはそれとは別に津波警報、および大津波警報の発令時にのみ使われる。ウインドサーフィンなどで沖に出ている人たちに津波警報を知らせ、避難を呼びかける合図だ。
大地震が発生した3月11日午後には、鎌倉市内でも防災無線で津波警報が伝えられたが、沖合にいた約30人のウィンドサーファーはそれに気が付かなかった。海から吹く7、8メートルの南風で防災無線の音声は吹き消されてしまったのだ。
材木座でウインドサーフィンショップを経営する新嶋さんが確認したところ、地震に気付いたのは、岸の近くまで戻っていて電柱がゆさゆさと揺れているところを見た一人だけだった。
1週間後にマリンスポーツ連盟の会合があり、防災無線とあわせて旗でも知らせることを検討した。4月の初めには3メートル×4メートルの赤いフラッグを試してみたが、曇り空だと海上からはよく見えない。もっと目立つオレンジ色のフラッグを採用することになった。
「津波は地震発生の後から来るので、逃げる時間がある。海にいる人を助けに行くことはできないが、なんとか知らせたい」と新嶋さんは話す。
鎌倉マリンスポーツ連盟では全国的な普及を目指しており、海岸で避難訓練を行ったこともあって、鎌倉発祥のオレンジフラッグは新聞やテレビのニュースでも伝えられた。鎌倉市だけでなく、神奈川県内の相模湾沿岸各市や静岡県御前崎市、九州の宮崎市などにも広がっているという。


































