4月上旬、桜並木が続く東京の千鳥ケ淵緑道を歩いた。午前5時、展望台になっているボート乗り場。ほのかに甘い香りが漂う中、満開の桜が、「水鏡」になった堀の水面に映り込み、幻想的な景色を織りなしていた。風が弱く、水の動きがない状態で、桜が咲きそろうという条件がそろわないと見られない絶景だ。
千鳥ケ淵に桜が植樹されたのは明治14年、英国大使館前が最初。それが今では約700メートルの遊歩道に、ソメイヨシノやオオシマザクラなど約260本が咲き誇り、堀の向かい側、皇居外苑の北の丸公園にも約330本が植えられており、今シーズンも100万人以上が訪れた国内有数の桜の名勝地だ。
見ごろに合わせて毎年開催されている「さくらまつり」。今年も白と淡いオレンジのLEDでライトアップされた爛漫の桜が夜空に映え、その下を会社帰りのサラリーマンや若いカップルが歓声を上げていた。
満開が過ぎると、散った花びらが堀を埋め尽くす。「花筏(はないかだ)」と呼ばれる千鳥ケ淵ならではの風景だ。手漕ぎボートやカモが水面を渡るたび、その跡にはさまざまな幾何学的文様が描き出され、独特の風情を醸し出していた。
ボートで堀を散策すれば、水面に浮いた花びらや、すれすれまで伸びた枝に咲く花を手が届く距離で楽しむことも可能。はかなく散ってしまう桜だからこそ、悠久の時間を感じることができた。 (写真報道局 彦野公太朗)































