時代の足あと 【筑後川昇開橋】

 赤くそびえる2つの鉄塔がひと際目を引く「筑後川昇開橋」。旧国鉄佐賀線の鉄橋で、

いまは遊歩道に姿を変え親しまれる地域のシンボルだ。

 同橋は福岡県大川市と佐賀県佐賀市の境を流れる筑後川に昭和10年に設けられた

可動橋で、鉄道用として作られ現存する国内最古の昇開橋。建設時には東洋一の

大きさとうたわれた。

福岡県大川市の筑後川総合運動公園から打ち上げられた第57回大川花火大会を 佐賀県佐賀市から筑後川昇開橋とともに望む
ニコン D4 70-200ミリ ISO100 f11 多重露光

 全長約507メートル。中央部分の可動桁が列車通過時に下降する船舶優先の

昇開橋で、普段は上がったまま。当時盛んだった大型船舶の航行と鉄道輸送が

共存する形をとった。

青空に赤い橋が映える筑後川昇開橋を福岡県大川市側から望む=福岡県大川市

 「ガッタン、ガッタンと大きな音を立てながら、(列車が)ゆっくり鉄橋を

わたるところが格好良かった」と話すのは、筑後川昇開橋観光財団の事務局長、

鐘ヶ江謙さん(63)。小学生から高校生まで佐賀線を利用し、鉄橋に差し

掛かる際には列車の前方に足を運び景色を眺めたという。

約20秒ごとにカラフルに変化する照明が美しい夜間の遊歩道=佐賀県佐賀市

 製材所に運ぶ木材の輸送や人の乗り降りが盛んだった昭和30年代には、

熊本駅と長崎駅を結ぶ準急「ちくご」が走るなど栄えたが、自動車の

普及とともに需要は減り、昭和62年、半世紀続いた佐賀線は廃線となった。

筑後川昇開橋の真ん中に昇る太陽を佐賀市の諸富港から望む=佐賀県佐賀市

 地元市民らによる筑後川昇開橋保存会の活動により解体撤去をまぬがれた

昇開橋は、線路の撤去や手すりの設置など保存整備工事を経て、平成8年に

遊歩道として生まれ変わった。

暗闇の中、ライトアップされ浮かび上がる筑後川昇開橋。露光中にピントリングを操作すれば 幻想的な光景が浮かび上がった=福岡県大川市

 平成15年に国の重要文化財に登録され、19年に日本機械学会が認定する

機械遺産に選ばれるなど、その特色ある技術が今も高く評価されている。

 四方、さまざまな場所から望めるのが魅力の昇開橋。

「ぜひ近くに来て触れて楽しんでほしい」と鐘ヶ江さんは話す。

徐福サイクルロードとして市民に親しまれる旧佐賀線・光法駅跡=佐賀県佐賀市

 昇開橋と花火を撮影しようと筑後川沿いにカメラを据えた。

1時間ほど打ち上げられた花火は真っ赤な橋を夏色に縁取り、その足元では

LEDの灯りが水面を彩る。幻想的な光景の中、先人たちの智恵に思いをはせた。

(写真報道局 竹川禎一郎)

薄暮の中に浮かび上がる筑後川昇開橋=福岡県大川市

【昇開橋】

 橋の一部が動く可動橋のひとつ。筑後川昇開橋は橋の中央部に設けられた可動桁が

ワイヤで昇降する昇開橋。可動橋には、他に跳開橋や旋回橋などの種類がある。

 旧鉄道省の技術者、坂本種芳と稲葉権兵衛の共同作業で筑後川に架けられ、

列車通過後の上昇時は2つのウエイトが下がり、長さ24メートル、重さ48トンの

可動桁を23メートルの高さまで上昇させた。

 技術的に優れ、歴史的価値が高いとして平成15年に国の重要文化財に指定され、

19年には日本機械学会により機械遺産に認定された。

佐賀市側の遊歩道を歩く観光客=佐賀県佐賀市

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