■ シーン1 ツバキ一輪 復興の春
寒さが厳しかったせいだろう。今年の鎌倉はツバキの開花も少し遅れた。東勝寺橋(とうしょうじばし)の下流。岸辺に張り出した枝から、その遅めの花が、鮮やかな彩りのまま滑川(なめりかわ)に落ちる。
盛りの花を静かに受け止める川の流れも、まだ身を切るように冷たい。東日本大震災からの1年、いまも続く被災地の苦難に思いをはせ、追悼と復興の願いの中で、鎌倉もまた、春を迎えた。
橋の名の由来でもある東勝寺は、鎌倉幕府の第3代執権、北条泰時が創建したとされる北条氏の氏寺であり、歴史上鎌倉幕府滅亡の地としても知られている。ただし、いまは東勝寺橋から坂道を少し上ったところに跡地が残るだけだ。
その片隅にある「腹切りやぐら」は、第14代執権だった北条高時ら北条一族が新田義貞軍に追い詰められ寺に火を放った後、自刃して果てた場所と伝えられている。
東勝寺跡は国の史跡に指定され、文化庁から世界遺産登録の候補として推薦された「武家の古都・鎌倉」の構成遺産のひとつにも含まれているが、一面の草むらに往時の面影はない。
(撮影:写真報道局 渡辺 照明/文:編集委員 宮田一雄/SANKEI EXPRESS)
■ シーン2 試練乗り越え、祈りひとつに
午前中の冷たい北風が正午を過ぎたあたりからやわらぎ、曇り空も穏やかな春の青空に変わっている。北風と太陽の寓話(ぐうわ)を思い出させるかのような陽気となった2012年3月11日の午後、北鎌倉の建長寺では「東日本大震災~一年目の祈り~」が開かれた。東北の被災地をはじめ、日本列島各地で行われた追悼 と復興祈願の催しの一つである。
「東日本大震災~一年目の祈り~」の法要は、祭事に参列する宗教者が祈りを込めて境内を一巡する、巡堂と呼ばれる行列からはじまった。国重要文化財の法堂では巡堂の後、神道のおはらい、キリスト教の祈り、お坊さんたちの読経が順番に進められ、境内を訪れた約7000人の参加者の長い焼香の列が続いた。一方、由比ガ浜の海を望む長谷寺の境内では前日の3月10日夜、東日本大震災一周忌追善法要「鎮魂の万灯会(まんとうえ)」が浄土宗、真言宗、臨済宗、日蓮宗の4宗派により執り行われた。
東日本大震災は、被災地から遠く離れた土地で、普段は宗教というものをあまり意識せずに暮らす人たちにとっても、祈るということの意味を問い直す大きな機会になった。試練に直面して生まれた新たな動きだろう。
由比ガ浜の海を望む長谷寺の境内では2012年3月10日夜、東日本大震災一周忌追善法要「鎮魂の万灯会(まんとうえ)」が浄土宗、真言宗、臨済宗、日蓮宗の4宗派により執り行われた。
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