ここ数年の間に、何度か南アフリカに野生動物の撮影に訪れたりしている。海中で、自分を守るものが無い環境で野生動物と対峙する撮影に慣れてしまったからか、車中という安全な環境にいて、野生動物を撮影する事に最初はあまり興味がわかなかった。
そう言うと、「自分の意思で撮影に行ったんじゃないのか?」と言われてしまいそうだけど、まさにその通りで、ニュージーランド人の友人カメラマンが、南アフリカのクルーガーナショナルパークの近くに小さなロッジを建てたから、日本人ゲストを迎え入れたいというので、ゲストを募って撮影トリップを企画したことに始まる。
ケニヤなどでは、車から降りてはいけないとか、ルートから車が外れることも許されないとか聞いていたから、それではサファリパークと一緒だなと思っていたのも事実だった。
しかし、いざ南アフリカに行ってみると、ナショナルパーク内は確かにそうなのだけど、その周辺に点在するプライベートサファリ、つまり、個人オーナーが所有する広大な土地に、ナショナルパークなどから野生動物を移送して、ほぼ野放しの環境に置かれた敷地内を移動する場合には、そのようなルールは無いということを知った。
ガイドがライフルを持ち、車から降りてゲストを野生動物(野生と言っていいのかも疑問だけど、動物たちは、別に人間に慣れているわけではない)に徒歩で接近させたり、幌のまったく無い車なのに、ルートから外れて、茂みの中で休む、ライオンの親子の目と鼻の先まで車を近づけるなんてこともザラだ。動物たちの機嫌が悪ければ、きっと簡単に襲われてしまうに違いない。
そのようなちょっと緊迫した環境が面白くて、それから、ゲストを募って何度か訪れるようになった。
しかし、やはり正直な話、動物の撮影にはあまり、意欲がわかない。それよりも、野生動物の保護センターを見学に行き、様々な保護活動の話などを聞く方が、興味深かったりする。
マホロホロ鳥獣保護センターというものに、毎回ゲストを連れて行く。英語での解説なので、なかなか皆が全てを理解することは難しいのだけど、アフリカでの野生動物の食物連鎖のサイクルに関してのレクチャーや、今現在どのような密猟が行なわれているかとか、それに対してどのような対策がなされているか。ある動物を保護しすぎて、他の動物が絶命の危機に瀕しているとか、そんな話が聞けて、考えさせられることも多い。
昔は、アフリカのほぼ全土に分布して、食べ物を求めて、国境も、フェンスの境も無く放浪していた野生動物たちは、今、この写真の緑色の部分(何らかの保護区やナショナルパーク)に押し込められている。
以前、象牙のために密猟されて、個体数を減らしていたアフリカゾウ。クルーガーナショナルパークでは、保護しすぎて、個体数が増えてしまい、四国ほどの大きさの同ナショナルパーク内で維持できるゾウの個体数約8000頭を大きく上回り、現在約12000頭が生息している。
四国程の大きさでその程度しか生きていけないのかと、まず驚いたのだけど、ゾウは、木をなぎ倒してその木の皮や葉などを食べ尽くす。だからゾウが多過ぎると、森林が破壊されてしまって、再生に時間がかかるのだそうだ。
そのアフリカゾウを保護することで、木々がなぎ倒され、そこを生活の場にしている、写真のグランドホーンビルという鳥は今、巣を作る場所を奪われて絶滅の危機に瀕しているのだという。そのためには、ゾウの個体数を間引かなければいけない。
密猟者だけが悪いのか。野生動物の生息環境を奪ってしまった人間全てに罪は無いのか。
最近ではサイの角が、男性の精力剤とか漢方薬になるとされて、多く密猟されているそうだ。サイの角は、髪の毛や爪と同じようなケラチンというタンパク質成分が固くなってできている。実際には、薬効成分はほとんど期待できない。しかし、サイの角は、アフリカ黒人の一般年収の3年~5年分に相当するのだと言われれば、密猟が絶えないのも納得がいく。
密猟は、ナショナルパーク内だけでなく、その周辺のプライベートサファリでも被害が発生していると聞いた。サファリのオーナーの中に、密猟者対策として、生きているサイの角に、注射器で毒を注入しているということだった。その角を密猟者がアジアの国に売り、何らかの形で角の内部の毒に触れたりしたために、購入者がその毒にあたって、重体になったという話もしていた。そのニュースが流れて、サイの角を闇取引するブローカーが減ったそうだ。ガイドの一人は、「もし密猟に効果があるのであれば、私はその手段も止むおえないと思う」と彼女の意見を聞かせてくれた。
自分には、どうあろうと、人の命を奪っても構わないという考え方は、理解できない。密猟対策や、野生動物の保護に関しては、聞けば聞くほど、何が正しくて、何が正しく無いのかがわからなくなってくる。
常にそういう矛盾を孕んで、自然環境保護というのは、存在しているのだと思う。だから、「私はこれを守らなければいけない使命がある!そのために生きている」と特定の動物に対して家族愛以上の強烈な思いと、強い意志を持っている人間か、あるいは相当に洗脳されてしまった人でないと、その矛盾に流されてしまうに違いない。
最終的に、その人の行為が正しかったかどうかは別にして、自然環境保護というのは、そういうことの繰り返しなのだと思う。でも、間違いなく、少なからず、断固とした意思を持った人が、時には登場しなければいけないのだ。
密猟で母親を殺されて、鳥獣保護センターに保護されていたクロサイの赤ちゃん。今は、ボランティアの女性に甘える子犬のように付き従っているけど、いつかは野生に返さなければいけない。はたして野生に帰ることができるのだろうか。
真正面で撮影していた時に、僕にもすり寄ってきた。一瞬「かわいい〜」と思ったけど、角が僕の弁慶の泣き所にゴツンとぶつかってきて、めちゃくちゃ痛かった。
INTO THE BLUEでは、この南アフリカへのスペシャルトリップも毎年10月頃に企画している。興味のある方は、http://takaji-ochi.com


































